| トップ > 特集一覧 > 患者にとっての「アメニティ」〜後編〜 | ||||
特 集 |
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前号では、亀田総合病院の取材を通して、アメニティの本質を考えてみたが、今回は後編として、実際の設備の面に即して、株式会社アクア・アート、株式会社イケヤ、パワープレイス株式会社にご協力いただき、具体的に取り上げてみた(もちろんアメニティといっても、捉え方はさまざまではあるが、今回は一般的な外来待合い部分に当たる設備を取り上げた)。 |
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| 単なる内装・サインというだけではない、医療の空間スペースとファシリティ | |
| パワープレイス株式会社は、オフィスや一般企業を含め、広く空間デザインとファシリティ計画を手掛けているが、医療施設、福祉施設についても主要デザインフィールドと捉えて取り組んでいる。医療施設にとってのアメニティ空間に求められる条件を考察し、使いやすさ、分かりやすさ重視の、利用者による評価及びその積み重ねた経験値によって、利用者にもスタッフにも満足度の高い空間作りを行っている。例えば、ある眼科クリニックの設計に対しては、使いやすさを実現するために、建築では他に例が無い利用者延べ100名(高齢者、かつ白内障・緑内障患者が中心)の参加による精度の高い調査を実施した。 医療施設や公共施設には不特定多数の人間が集まる。とりわけ医療施設を訪れる人は、身体的に何らかの負荷を負い、集中力が低下して、精神的ストレスを抱えているケースが多いはずである。またその場所に初めて 来たという人もいよう。作る側と使う側の意識の違いを超えた「より分かりやすさ」を考えねばならない。色の工夫やインテリアの位置を考えるといったことには、特別に物理的にコストがかかるわけではない。設計時に導線・案内が充分考えられていれば、後から院内に貼り紙をする必要も生じない。 また患者さんのみならず、例えば患者さんに案内を問われる機会が減れば、職員の側にも時間的な効率化が図れるメリットがある。 実際問題として、医療施設においてみも、現場のスタッフは課題が何であるかを分かっているケースは多いという。しかしながら解決方法に辿り着かないと。医療施設には「サービス業」的観点が薄いと良くいわれるが、パワープレイスではオフィス、企業、などの一般的サービス業分野から、医療施設に足りない点を取り入れたり、また逆にユニバーサルデザイン、バリアフリーなどで進んでる点を他業種に導入するなど、相乗効果を活かした設計、コンサルティングが行われている。 |
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| 外来待合いスペースの活用は待ち時間のストレス軽減+アルファ | |
| 株式会社イケヤの“リトルツリー”は本来の目的が明確に捉えやすいだろう。子どもが遊べるスペースを一式丸ごとレンタルするシステムであり、コルク床・木のおもちゃ・絵本等で構成されている。子供連れで訪れる人が多いスペースで、同様の施設を目にすることは少なくない。医療施設においても、小児科のみならず、差別化や集客にプライオリティを置く施設は、何らかの子供向け対策を行っていよう。 子供向けの玩具や設備を扱う店も数多くあり、物を購入して設置することは難しいことではないが、“リトルツリー”には、まずシステムとしての導入のしやすさを挙げられよう。子供は走り回ることが好きである、それを限られた空間で効率良く遊ばせる工夫を考えなくてはならない。世界中からセレクトされた積木、絵本、ままごとセット 知育玩具。中心となるDEN(デン:居心地よいすみかの意)は、子供が中に入って遊べ、不安感を与えない大きさのハウス的設備で、130種類以上のデザインが用意されている。デザイン面はもちろんだが、なめらかな肌触りのシナ材、吸湿、吸音、消臭、保温に優れ、やわらかすぎずに適度なクッション性を持つコルク床材、からだに優しい水性塗料、でんぷんで作られた接着剤を使用するなど、素材でも子供目線で“安心安全”に配慮がなされている。 実際の運用での一番の問題は衛生面とメンテナンスだろう。その点では、季節ごとに(4ケ月に1度)新しいデザインに取替、おもちゃの交換、汚れ壊れのメンテナンスが行われる。そして年に1度中形おもちゃ、3年に1度、床を含むすべてのアイテムがリニューアルされるというのが専門リースの大きなメリットでもある。 規制緩和があったとはいえ、医療施設の広告には制限があり、また集客については依然口コミによる割合いが高い実状において、こういった設備と、それを導入する医療施設として受け身ではなく前に出る姿勢は、宣伝効果も充分あると考えられよう。ちなみに今後は絵本の充実や、リースではなく、販売&メンテナンスも予定されている。 株式会社アクアアートが扱うインテリア水槽の「アクアリウムレンタル」も医療施設に限らず、目にすることの多いアメニティかと思われる。「ゆったりと遊泳する色鮮やかな魚達」「水草のあざやかなグリーン」が医療施設を訪れる患者さんや院内で働くスタッフを心地良く癒してくれる。一定以上の規模の物や、熱帯魚などの種類によっては高価であったり、特殊な設備と専門の知識が必要であったりするので、これもまた専門リースのメリットが大きいものであるかも知れない。 先にも述べたが、患者は身体的にも精神的にも不安感を抱えているため、待合い時間のたいくつ解消のみならず、水槽の中ではあるが、魚類、水草といった、本物の自然を置くことにより、無機質的に捉えられがちな医療施設において、気持ちを和ませることは、スムーズな診療につながるという評価もある。特に小さな子供は関心を示すことが多く、小児科はもちろんのこと、他の診療科でも、子供を連れた母親の患者さんには喜ばれているらしい。 また、「アクアリウムレンタル」には一部自動的に与餌する装置もあるが、基本的に餌は現場のスタッフが与えることを前提としている。実は餌を与えるということにより、スタッフ・勤務者に観賞魚に対する親近感が生じ、単なる観賞用インテリア以上の存在として、職場環境の向上に寄与するということもある。 水槽コンクール(もちろん水槽のみではなく熱帯魚等観賞用の中身を入れたもの)で優勝するなど、また既製品のみでなく、大きさ、キャビネット部分の色などオリジナルでの製作も可能。地震対策の耐震板設計と、もちろん専門性に関しての評価は高い。 |
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| 医療施設のアメニティ | |
| またアメニティに関する大切なコンセプトとして、「アート・イン・ホスピタル」というものがある。専属のアートディレクター、アナグリウス・ケイ子氏の制作やディレクションによるアートを取り入れ、心休まる人間的な治療環境作りに取り組んでいるのだ。廊下のニッチ(窪み)には、フロア毎に設けられたテーマに沿ってケイ子氏手作りの可愛らしいアートが置かれている(写真左)。例えば、4階女性専用フロアのテーマは「暮らし」。小さな花屋さん、宝石屋さん……といったアートがニッチを飾っている。これはウィンドウショッピングをイメージして作られており、女性特有の疾患に関しては、精神的ダメージが大きいものが少なくないのと、日常生活の楽しみの要素を置くことで、病気の回復、早期の社会復帰への意欲を持たせる意図が込められている。 また、亀田クリニック産科外来の待合室には、アートを用いた妊婦さんの学習コーナーが設けられている。かねてから妊婦さんの体重管理(過体重)が問題となっていたことを受け、アートディレクターや産婦人科医師、栄養士等が意見を出し合い、分かりやすく、なおかつ楽しく学習できるコーナーをと企画したのだ。ただ費用をかけ、趣向をこらすだけではなく、参加をすることにより、スタッフに主体性を持たせると共に、コンセプトをより深く理解することができるからだ。 |
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| 全個室の入院病棟「Kタワー」 | |
| 以前は「病院」というと、無機質で暗い感じをイメージする人が多かったと思われるが、昨今では、内外装、カラーリングやインテリアにこだわった病院、クリニックがかなり増えてきている。 「アメニティ」=環境などの快適さ。特に都市計画で、建物・風景などの快適性にいう(大辞泉)。 医療施設のアメニティというと、建築物そのもの、ユニバーサルデザイン、バリアフリーなどの構造的なもの、照明、デザインや色調というイメージ的なもの、内外装、インテリアや絵画や植物の展示などなど。医療機器以外の設備の充実と捉える向きが多いのではなかろうか? 国民皆保険制度、診療報酬点数制度、医療・福祉の社会性の観点などから病院、クリニックにおける、「サービス業」的視点や、(営利目的という意味ではない)マーケティングの観点は、医業界にとってはなかなか浸透しにくいものであったと思われる。それゆえ、「アメニティ」についても、現在関心度が高まっている割には、特に専門的な研究や評価という面でもたいへんに立ち後れているといえよう。実際、本特集に当たって、インターネットや専門書籍等を数多く目にしたが、まとまって全体像を捉えているものはほとんど存在しないように感じられた。 制度面でいえば、急性から慢性への疾病構造の変化、高度経済成長から低成長経済への移行、価値観・ライフスタイルの多様化などから、制度疲労が生じている部分があることは否めなかろう。特定療養費制度や、差額ベッド(を支払っても個室や設備の整った部屋を希望する割合いが高まっていること)の問題はその一旦であろう。 弊誌のメインコンセプトは“患者満足の向上サポートによる医療機関へのサポート”であるが、 実際医療業界において、価値観・ライフスタイルの多様化、また多くの病院が赤字で苦しむ状況下、「患者中心の医療」「患者満足度」などという言葉が、最近頻繁に取り上げられている。「患者満足度」には当然のことながら、医療行為以外に、建物の快適性、設備の充実度、スタッフの接遇、待ち時間などの項目が含まれることに依存はなかろうが、「アメニティ」にもまた、「快適な空間」であるならば、直接的な物理的要素以外の物も含めて考えるべきではなかろうか? 防音や院内感染対策という、設備である面も踏まえたものから、カルテの開示やインフォームド・コンセント、医師とのコミュニケーションまで。ことに「聞く態度」「説明の分かりやすさ」という医師の応対、スタッフの応対については、患者の医療施設へのロイヤリティに反映される度合いは極めて高いであろうと思えるからだ。 今回後編では、個別的なサービスや物を取り上げながら、その延長線上にあるものもちりばめたつもりだが、読者の皆さんはどう思われるだろう。もちろんレピオスとしても今後一層真剣に考えていかねばならないテーマである。 参考文献:手遅れにならない医者選びの常識(法研)、日経 病院ランキング(日本経済新聞社)、患者満足度(日本評論社)、競争に勝ち抜く医療マーケティング(ぱる出版) |
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前号では、亀田総合病院の取材を通して、アメニティの本質を考えてみたが、今回は後編として、実際の設備の面に即して、株式会社アクア・アート、株式会社イケヤ、パワープレイス株式会社にご協力いただき、具体的に取り上げてみた(もちろんアメニティといっても、捉え方はさまざまではあるが、今回は一般的な外来待合い部分に当たる設備を取り上げた)。